今日はこのバンドを紹介します。
THE BACK HORN。
皆さんはどんなイメージを持っていますか?熱い?男臭い?美しい?
多分どれも正解です。でも僕はあえて初期のTHE BACK HORNの特徴でもある、闇について着目して紹介をしていきたいと思います。
僕がバックホーンのことを書くときによく出すのが「自由」とか「純粋」とか「衝動」っていう、素晴らしいものとした描かれがちな感覚が同時に持っている、危険さや厄介さやどうしようもなさを暴くのがバックホーンだっていう。
インタビュー 兵庫慎司
ROCKIN’ON JAPAN2007年6月号より
ただ美しい物を美しく描くのではなく、裏側にある危険な一面も描いていくところがバックホーンというバンドなのではないかと思います。
特に初期のバックホーンには常に闇と隣り合わせにいるような切迫感や緊張感を感じ取れる作品が多いです。1st、2ndフルアルバムのジャケットも黒を基調にしており邪悪な雰囲気を感じずにはいられません。1枚目は多くの人間が砂時計の砂のように描かれて、そして粒のようになりビル街へ落ちていく。2枚目は"心臓のようなもの"から動脈、静脈が伸びている。今回はこの2枚から選んだ曲を紹介していこうと思います。
1stアルバム
2ndアルバム
1.サニー
THE BACK HORNの"サニー"をApple Musicで
彼らのデビューシングルでもあるこの曲。歪んだ危険なギターフレーズから始まるこの曲には常に暗い雰囲気が出ています。少年時代の葛藤や回想、汚い社会や大人への不信感、恐怖感などが感じ取れる詩。
サビで歌われるVo.山田将司さんの絶叫が心に刺さります。
見ろよ流線型は人を殺す時の気持ちさ
震えたままで動けなかった
今もあの時の気持ちのまま
流行りの10年代四つ打ち邦楽ロックなんかには絶対出てこないでしょこんな歌詞。フロアを熱狂させるとかどれだけ観客を躍らせるかとか、その程度の事は全く彼らの眼中にはないですからね。ただ自分が感じた絶望の闇を、こうして絶叫と爆音で表現する。こんなテーマの名曲を1stシングルとして持ってくるんですからね。売れ線とか時代とか関係なし。バックホーンのこういうところ大好きです。
汚い社会苦い味さえ飲み込めるようになってしまうの
あの日土砂降りの雨の事大人たちに連れられ泣きながら僕を呼んでた
当時14歳だった僕はこの歌詞を聞いて本当に恐ろしさを感じていました。今でも聞くと感じますけどね。苦い味さえ飲み込めるようになってしまうのでしょうか。この歌に出てくるような軽蔑すべき大人たちに僕たちはなっていくのでしょうか。だとしたらとても嫌ですね。
2.8月の秘密
THE BACK HORNの"8月の秘密"をApple Musicで
神風特攻隊のことを描いた彼らの名曲コバルトブルーもそうですが、実際の歴史上の出来事をモチーフに書かれた曲も多いバックホーンの曲たち。この8月の秘密もそんな曲の一つ。明るい夏のテーマを想像した人はごめんなさい。この歌に出てくる8月は恐らく太平洋戦争中、終戦間際の8月でしょうか。
暗さの中にどこか和を感じるメロディ。
静と動。とくに静の時の不安感を煽るこのメロディと音数の少なさ。そして歌詞がとても子供っぽい、幼稚な歌詞なところが本当に不安になります。
黒こげ ぼうくうごう
秘密の夢見たね
青空猫の死骸
友達の消えた夏
ぼうくうごうが平仮名のところとか、友達の消えた夏ってフレーズヤバいですよね。友人の死は明言されたわけではないですが、その死を意識させるような歌詞か所々に出てきます。
こんな儚いのに離れてしまうのか
君に会いたくて泣いた
君が見つからないからかくれんぼ終わらない
バックホーンの闇を凝縮したような一曲。
3.世界樹の下で
THE BACK HORNの"世界樹の下で"をApple Musicで
この曲はPVが素晴らしいので是非載せたいところだったんですけどもう全然ネットに上がってなかったので無理でした。本当に素晴らしいです。歌ってる山田さんがクッソ死ぬほどイケメンだったからってのもあるんですけど、3人(当時はメンバーが3人だった)の持ってる絶望感というか悲壮に満ちた表情が圧巻過ぎたからです。活力に溢れているはずの3人の若者が、ただ喫茶店の席に座って虚空を見つめている。あの風景が今も忘れられないです。
この曲はエゲつないほどに美しいです。サビ以外では基本的に美しいギターのアルペジオが使われています。そしてサビではすべての感情を吐き出すような絶叫に、歪んだギターの音色。そして歌われる強いメッセージ。
若き兵士が愛しき者を守るため
殺し合うのは美しいことだと本当に言えるのか
どうなんでしょうね。僕はそんなこと言えないと思いますし、でもちゃんと考えたらやっぱり複雑で難しい話なんでアレですけど。でもこれを歌うこの曲が美しいってことだけは確実に言えますね。
星がいつかは命を貫き
みんな幸せな星座になれたら
ダークな世界観にダークな曲調のこの世界樹の下で。でも、この明るいとは言えないこの歌詞が、僕には救いとして聞こえます。全然前向きじゃないですけどね。でも救いって別に後ろ向きでも闇の中にあっても全然不思議じゃないですよね。逆に苦しいときほど、同じ苦しい境遇の人に共感したりとか。後ろ向きな時は、前向きなものに拒否反応を起こしてしまうこともありますよね。THE BACK HORNが持つ闇の部分。闇が持つ救い。僕はそんな救いをこの一説に感じました。
本当は誰もが 本当は誰もが
思い描けるさ
まあバックホーンについてはまだまだ語りつくせないほど語りたいことたくさんあるんで多分続きます。次回作もよろしくね。読んでくれてありがとうございました。